私がなぜ投資信託をしないのか

子育て世代にとって、「お金」というテーマは、子どもの寝顔を見つめる夜、ふと頭をよぎる切実な悩みです。教育費はいくらかかるんだろう。老後は大丈夫だろうか。

そんな不安を背景に、「NISA」や「iDeCo」といった制度が整備され、今や「投資信託、やってますか?」という会話は、ママ友とのランチでも珍しくなくなりました。特に「オルカン(オール・カントリー)」や「S&P500」といったインデックスファンドは、まるで“正解”であるかのように語られます。「月々3万円を30年積み立てれば、3000万円に…」そんなシミュレーションを見て、口座を開設した方も多いでしょう。

かくいう私も、もちろん投資はしています。
これから厳しくなる日本経済の荒波を生き抜く術として、必須のスキルだとさえ思っています。

しかし、私は世間で王道とされる「投資信託の積立」を、今はあえてしていません。誤解しないでいただきたいのですが、投資信託、特に低コストのインデックスファンドは、資産形成の手段として非常に優秀です。「時間がない」「難しいことはわからない」「ほったらかしにしたい」という方にとっては、これ以上ないソリューションでしょう。

それでも、私がやらないのには、3つの明確な理由があるのです。


理由①:「固定費」が、今の「経験」を奪う


第一の理由は、積立投資が家計における「固定費」となり、日々の生活のゆとりを奪ってしまう可能性を危惧しているからです。

「月々3万円なら、なんとかなる」そう思って始めた積立も、子どもの習い事が増えたり、予期せぬ出費が重なったりすると、じわじわと家計を圧迫します。私たちは「将来の教育資金のために」と、この固定費を聖域化しがちです。しかしその結果、今、目の前にある「かけがえのないもの」を犠牲にしていないでしょうか。
例えば、積立の3万円を捻出するために、週末の家族旅行を諦める。子どもが「やってみたい」と言った新しい習い事を、「お金がかかるから」と躊躇する。あるいは、日々の食卓から、ささやかな「ごちそう」が消える。

以前も書かせていただきましたが、私は教育資金とは、何も「大学の学費」だけを指すものではないと思います。

18歳になった子どもに500万円の「お金」を渡すことと、18歳になるまでに500万円分の「経験」をさせてあげること。どちらが、その子の人生を豊かにするでしょうか。

もちろん、これは極論です。バランスが大切なのは言うまでもありません。それでも、私の大学時代の経験や、これまで多くのご家庭を見てきた中で、「お金だけを用意された子が本当に幸せなのか」については、常に疑問を抱いています。

投資信託の積立は、「お金に働いてもらう」という魅力的な響きの裏側で、知らず知らずのうちに「私たち自身が、積立金のために日常の経験を切り詰める」という構造を生み出していないか、と立ち止まって考えてしまうのです。 子どもの好奇心が爆発する、今のこの瞬間。家族全員で笑い合える、今のこの週末。その「今」しかできない経験こそが、子どもの生きる力を育む、何よりの「教育資金」ではないか。私はそう考えています。

そして、その豊かな経験があるからこそ、18歳になった時、あるいはそれよりも前に、自ら「選択」ができるのではないでしょうか。知らなければ、選ぶことはできません。

皆さんは今、熱中していることはありますか?
それはどんなきっかけで始めましたか?
今の仕事をしているのは、どんな出会いがあったからですか?

習い事、趣味、興味を持ったこと。
こうした情熱は、テレビで見たり、自分以外の誰かが与えてくれたりした「経験」がきっかけとなり、初めて芽生えるものだと私は思っています


理由②:「経済の筋肉」がつかない


第二の理由は、投資信託(特にインデックスファンド)が、「経済の知識」や「世の中の動きを読み解く力」を、私から奪ってしまうと感じるからです。

投資信託の最大のメリットは、「プロにお任せできる」「深く考えなくてもいい」ことです。市場の平均点を狙うインデックスファンドなら、なおさらです。しかし、それは裏を返せば、「思考停止」に陥りやすいということ。日経平均が上がっても、「ああ、私のオルカンもちょっと増えたかな」で終わってしまう。なぜ上がったのか? どの業界が牽引しているのか? その背景にある国際情勢や金融政策は?そこまで深く掘り下げなくなります。
本当に豊かさを築いている人々は、「平均点」で満足したり、投資を「丸投げ」にしたりはしません。彼らは自ら事業を起こし、専門性を磨き、経済の最前線で「リスク」と「リターン」に能動的に向き合っています。

私たち子育て世代こそ、この「経済の筋肉」を鍛えるべきです。なぜなら、私たちは子どもに「社会の仕組み」を教える、最初の先生だからです。

「どうして、あのお店のジュースは値上がりしたの?」
「パパ(ママ)のお仕事って、景気と関係あるの?」

こんな素朴な疑問に、自分の言葉で答えられる親でありたい。

投資信託に「お任せ」して、経済ニュースを他人事として眺めているだけでは、その力は身につきません。私にとって投資とは、資産を増やすためだけの「作業」ではなく、社会と繋がり、経済の生きた動きを学ぶための「最高の教科書」なのです。


理由③:目的達成に「多額の元本」が必要になる


そして第三の理由。これが最も現実的な理由かもしれません。

それは、投資信託のリターンだけで、私たちの世代が限られた時間の中で「目標額」を準備するには、あまりにも多額の元本が必要になる、という事実です。

投資信託の期待リターンは、年平均5%〜7%と言われます。これは素晴らしい数字ですが、例えば「子どもが大学に入る18年後までに500万円」を目指す場合、月々いくらの積立が必要になるでしょうか。

計算すると、6%の運用益を想定しても、年間約16万円(月1万3,333円)になります。冒頭に記載した老後のための積立月3万円、さらに二人分の教育資金を考えれば月2万6,700円。つまり、毎月6万円弱をずっと積み立て続けなければなりません。それだけの元本を無理なく捻出できる家庭は、そう多くありません。そして、もし少ない積立額で始めた場合、18年後に目標額に届かない可能性も十分にあります。

つまり、インデックス投資は「時間をかけて、大きな元本で、着実に増やす」ことには向いていますが、「少ない元本で、限られた時間で、目標額まで資産をジャンプさせる」ことには向いていないのです。もちろん、投資に「絶対」はありません。しかし私は、理由②で述べた「経済の筋肉」を鍛えながら、より高いリターンを目指す道を選びました。

それが、私にとっての「個別株投資」でした。

自分が心から応援したい企業、社会に必要とされると確信したサービス。それらを徹底的に調べ上げ、経済の動きを読み、リスクを理解した上で、自分の資金を投じる。もちろん、失敗もあります。資産が半分になるような痛い経験もしました。しかし、そのプロセスで得た知識、企業分析のスキル、そして何より「経済が自分ごとになった」という感覚は、投資信託を積み立てているだけでは決して得られなかった財産です。
そして幸いなことに、必死で学んだ結果として、運用成果も投資信託の平均点を上回ることができています(もちろん、これは結果論であり、常にリスクと隣り合わせですが)。

あなたは、投資に何を求めますか?

改めて申し上げますが、私は投資信託を否定するつもりは一切ありません。特に、これから投資を始める方、時間をかけられる若い世代の方にとっては、最高の「入り口」であり「土台」です。
ただ私は、「子を持つ従業員の雇用主」として、「日本人」として、そして「家族の幸せを願う一人の人間」として、投資を単なる「お金儲け」にしたくなかったのです。
日々の生活のゆとりと、家族の「今」の経験を大切にしたい。

経済という荒波を生き抜くための「知識」と「筋肉」を身につけたい。
そして、どうせやるなら、自分の頭で考え抜き、リスクを取ってでも目標を掴み取りにいきたい。
だから私は、今日も決算書を読み解き、ニュースの裏側を想像します。それが、私なりの「子どもたちへの教育」であり、「未来への責任」の果たし方だと信じているからです。

「積立NISA、満額やってる?」もし今度そう聞かれたら、あなたなら、どう答えますか?

正解はありません。ただ、大切なのは「みんなやっているから」ではなく、「自分と家族にとって、今、何が一番大切か」を、自分の頭で考え続けること。 それこそが、情報が溢れるこの時代を生き抜く、私たち子育て世代にとって最強の「武器」なのではないでしょうか。

あとがき

約一年間の連載にお付き合いいただき、本当にありがとうございました。

「お金」の話をしていたはずが、いつの間にか「生き方」の話になってしまう。
それくらい、この二つは切っても切り離せないものなのだと、筆を走らせながら痛感する日々でした。

私たちの発信の中に、一つでも皆様の心に響く「気づき」はありましたでしょうか?
お金は、貯めることがゴールではありません。使って、経験に変えて、思い出にして初めて、その輝きを放ちます。

皆様の「お金に邪魔されない日常」のすぐそばに、ささやかな幸せが溢れていますように。
一年間、本当にありがとうございました。

今回の記事やお金に関する事で、わからない事、ご不安な事がある方は、以下の公式LINEからご相談を承りますので、お気軽にご連絡ください。

 


今回、教えてくれたのは

大澤 裕貴先生
■ファイナンシャルプランナー
地域に暮らす人々の人生が最低限、お金に邪魔されることのないよう、お金の「かかりつけ医」として経済的・精神的安心を提供します

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店舗情報

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【所在地】新潟県長岡市中沢3-27-13 ウェルズ21中沢B号室


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【営業時間】10:00~20:00


【定休日】不定休(完全予約制)


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