今回はスポーツトレーナーの山本潤先生に聞いてきました
2021年11月
『親子のコミュニケーションにスポーツメンタルトレーニング?』と思う方が多いかと思いますが、今回お話させていただくのは、数多くのプロスポーツ選手やプロチームが活用しているプログラムの一部です。親子のみならず家族のコミュニケーションにも活用していただける話になっています。
メンタルトレーニングは、身体を鍛えるのと同様に【トレーニング】ですので修練によって学ぶ事も出来て、高める事も出来ます。最初から上手く活用する事は難しくても、繰り返し意識する事によって、確実に上達していきます。
では、どんな風にトレーニングをしていくか、ご紹介します。
スポーツもそうですが、物事には《基本》と《攻略法》が存在します。これを知っているのと知らないのとでは、成果に雲泥の差が生まれます。例えばギターで伴奏するとします。いきなり楽譜を見て演奏するのでは伴奏する事は出来ません。ギター伴奏では『C』や『Am』などのコードを先に学びます。いくつかのコードを先に習得する事により様々な曲を演奏出来るようになります。身体のトレーニングもメンタルトレーニングも、運動生理学や心理学に基づいた【コード】を学ぶ事により成果がぐっと上がります。
今回ご紹介させていただくツール(コード)は私が学ばせていただいている【原田メソッド】と呼ばれるメンタルトレーニングの幾つかの考え方です。【原田メソッド】というと有名なのはメジャーリーガーの大谷翔平選手が高校時代にも取り組んだ《オープンウィンドウ64》というツールですが、今回はそれではなく、【4観点】と呼ばれる人の感情を4つの観点から可視化するツールです。
人は身体の栄養だけでなく《心の栄養》も必要です。特に今回は心の栄養にスポットを当ててお話させて頂けたらと思います。
ここでは効果的な言葉掛けの例をご紹介させていただきます。こちらは親子間だけでなく、夫婦間や職場などでもご活用いただけると思います。
まず最初に1つワークをさせてください。これから私がお伝えする映像を絶対にイメージしないでください。『絶対に』です。
【真っ赤なカラスを絶対にイメージしないでください】
どうでしょうか。 『イメージしてはいけない』と頭では分かっているのですが、チラチラ脳裏に映像が映ってしまいませんか? 同様に【青いサンタクロース】【真っ白なドラえもん】【黒いトッキッキ】・・・
人間の脳は否定形を理解出来ないそうです。皆さんはお子さんに何か伝えるときにどのような言葉で伝えているでしょうか?
部屋を散らかさないで!!
こぼさないで食べなさい!!
いつまで寝てるの!!
こんな言葉で伝えていないでしょうか?私もよく使ってしまっていました。
これを【否定命令】と言います。①~③の言葉ですと『散らかす』『こぼす』『寝る』がイメージされてしまい無意識のうちに行動が引っ張られてしまいます。
ギター伴奏の事例でお伝えしたように、物事には必ず【攻略法】が存在します。上記を変換すると
部屋をキレイにしようね!!
キレイに食べようね!!
早起きしようね!!
イメージが変わります。更に感情をトッピングすると
部屋をキレイにしてくれてありがとう!!
綺麗に食べてくれてお母さんとっても嬉しい!!
早起きするととっても気持ちいいよね!!
親が子に、先生が生徒に、上司が部下に否定命令でなく、肯定的な導きが出来たらどうでしょう。
人は誰かに期待をされると学習や行動の質がぐんと上がります。これを専門的には【ピグマリオン効果】と言います。知っていて損はない《技術》だと思います。
『そんなんじゃ予選敗退だ!!』 ⇒ 『甲子園で躍動するぞ!!強くなろう!!』
どちらがプラスのイメージがわくでしょうか?
『期待に応えたい』気持ちが行動力を高めるという説明をさせていただきました。そしてそれを引き出す言葉掛けが重要です。そしてもっと重要なのが【関係の質】です。
《人は自分との約束は破りがちだが、大切な人との約束は全力で守ろうとする》
人のモチベーション(やる気・元気)は自分の事だけでなく、他の人にどのような影響を与えるかも大きく関係しています。
人の感情を 【自分・有形】【自分・無形】そして、【他者・有形】【他者・無形】と分ける考え方を4観点と言います。
【自分・有形】とは例えば『かけっこで1等賞をとる』『ひらがなをたくさん覚える』などです。
それに対して【自分・無形】とは『うれしい』や『自信が高まる』などの感情です。
そして【他者・有形】とは『お母さんに1等の賞状をプレゼントする』『お母さんにお手紙を渡す』という目に見えやすいものです。
最後に【他者・無形】です。実はここが最大のポイントです。お子さんが達成した事に対して『嬉しい』『喜ぶ』『元気になる』などの感情的変化が現れます。これこそ行動のエンジンです。お子さんだけに限らず一緒に喜んでくれる人がいる事こそが行動の源です。
『片付けをする』などの些細なお手伝いに対しても褒めてあげてください。喜んであげてください。前項でご説明させていただいた【ピグマリオン効果】の発動です。
褒められたいから、喜んでほしいから、お子さんは行動してくれます。どう褒めていいか、喜んでいいかが難しい、という方向けに数多くあるコミュニケーション法の中から2つ《肉体的コミュニケーション》と《心理的コミュニケーション》の事例を挙げさせていただきます。何事も【攻略法】があります。参考にしていただけたら幸いです。
ここまで何事にも【攻略法】が存在する事をお話しさせていただきました。それを知っているかどうかがとても重要です。料理もレシピがあれば再現率が高まるように、コミュニケーション法もまずは自己流よりも、先人から学ぶ事が大切だと私は考えます。コミュニケーション法をはじめとして、今回お話させていただいた分野を【ティーチング】【コーチング】と呼ぶ事があります。 ティーチングやコーチングの勉強会に参加すると驚く事があります。それは、全国から集まる歴々の経営者・指導者の方々が声を揃えて言うのが『新潟の偉人に学んだ』という事です。山本五十六・田中角栄、そして今年映画『峠』が公開される河井継之助など新潟の先人の名前が挙がるのです。彼らの教えは今なお我々の指標として語り継がれています。特に長岡市出身の山本五十六氏の名言には、今回私がお話させていただいた内容が集約されていると思います。有名なのは最初の文章ですが、続きも重要です。
――――――
やってみせ 言って聞かせて させてみて
ほめてやらねば 人は動かじ
話し合い 耳を傾け 承認し
任せてやらねば 人は育たず
やっている 姿を感謝で 見守って
信頼せねば 人は実らず
――――――
2021年、年末年始の大雪。そして連休中にも大寒波と、新潟県は1月の前半に記録的な大雪になりました。私には13歳の息子がいます。小学生の頃は小さいスコップを持って一緒に雪掘りをしていました。ところが今年は『俺が一人で雪を片付けるから、お父さんは仕事していて!』 と言うのです。一瞬『お前にはまだ早い』と言いかけましたが、山本五十六氏の言葉を思い出し、息子に注意事項を充分伝えて任せる事にしました。
そっとカーテンの隙間から息子の雪掘りを見守りながら、確かな成長を感じて喜ばしく思いました。お子さんはやがて【自立】します。それまで手を引き、背中を押し、見守る事が親の役目だと思います。私も子を持つ親です。子育ては山あり谷ありですが、今回のコラムが皆様のお役に少しでも立つ事が出来ましたら幸いです。
スポーツトレーナー
山本 潤 先生
新潟県十日町生まれ。スポーツトレーナーとして、県内外のアスリートの指導にあたる。自身のベースとなるスポーツは陸上競技のやり投げ。
現在は新潟県のパワーリフティングの現役県チャンピオン。全国4位の実績を持つ。
身体理論【4スタンス理論】マスター級トレーナーの資格を保有し、スポーツメンタルトレーニング【原田メソッド】の指導資格も持つ。
指導サポートチームが相次ぎ全国大会で活躍したり、指導選手からこの4年間で6人のプロ野球選手が誕生していることなどから【目標達成請負人】と呼ばれる。
指導実績
・長岡商業女子バレー部
・中越高校野球部
・中越高校駅伝部
・帝京長岡高校男子バスケ部
・河本耕平(競泳日本記録保持者)
・新潟アルビレックスBC
(外部ストレングス総合アドバイザー) 他、多数