新潟出身で、日本を代表する絵本画家の一人、黒井健は、『ごんぎつね』や『手ぶくろを買いに』などの名作童話、幼い子どもが初めて出会う『ころわん』シリーズなどの作品で知られています。
2012年、黒井健は画業40周年の節目の年を迎えました。これまでに描いてきた絵本や画集は200冊以上にものぼり、色鉛筆やパステルを使った独自の技法で描き出されたやわらかな雰囲気の作品は、子どもから大人まで幅広い年代の人々に愛され続けています。
本展では、その創作活動の軌跡を、作家や物語との出会い–文と絵のハーモニーをテーマに振り返ります。教科書でおなじみの新美南吉や宮沢賢治作品をはじめ、脚本家・山田太一、児童文学作家・あまんきみこなど–そのそれぞれの言葉に寄り添って描かれてきた多くの作品から、黒井健の世界を紹介します。また、原画以外の木彫作品や、フェルトアーティストでもある娘の凪(なぎ)とのコラボレーション作品も展示します。
新潟県の中越地方で起こった中越地震から10年、また空前の被害をもたらした東日本大震災から3年がたちました。この甚大な災害からの復興も祈念しつつ、中越地震後の故郷・新潟を訪れ描いた『ふる里へ』に代表される美しい新潟の風景を描いた作品、そして、東日本大震災で息子を亡くした母の体験を元に描かれた新作絵本『ハナミズキのみち』の原画もあわせて展示いたします。
本展を機に、あらためて美しいふるさとの姿を確認するとともに、未来の再生に向けて希望を見いだしていただければ幸いです。