今朝は、この子をわたしの都合で早起きさせた。
早くご飯をすませて保育園に送っていかないと、わたしの仕事に間に合わない。
今日はどうしても急がななくっちゃいけないから。
でも、この子はまだ眠くてよく食べられない。
それはわかるんだけど、でも、わたしだって会社に遅れちゃったら困るもの。
だから怒ってしまった。
「はやく食べなさい」「ほら、しっかり起きて、はやく食べなさい!」と、だんだん大きな声になって、最後はこの子を泣かしてしまった。
ああウルサイ。
忙しいのに泣いてないでよ。
だからよけいイライラするじゃないの。
「静かにしなさい!早くご飯を食べてしまってよ!」と叫んでテーブルをバシッと叩いた。
その音にビックリしてこの子は泣きやんだ。
ううん、泣きやんだんじゃない。
わたしに怒られないよう、声を震わせ短く短く息をして泣き声を出さないよう我慢していただけ。
そのあと大急ぎで着替えさせ、車に乗せて保育園にいった。
さっきまで泣いていたこの子、そっとわたしに手を振った。
「バイバイ」って。
ああ、そう・・・この子のせいじゃないのはわかってる。わたしの都合。それはわかってる、ほんとうにわかっている。
うん、謝らなくっちゃ。あの子に会ったら謝らなくっちゃ。
会社にいく車の中で、そればかりを思っていた。
仕事が始まると忙しさでちょっとは忘れることができたけど、やっぱりふっと思い出してしまうあの子の泣いた顔。
でも、わたしだって忙しいんだもの。時間がなかったんだもの。
しょうがないよ。
わたしだっていっしょうけんめいなんだもの。
しょうがないよ。うん、しょうがないよ。
忙しい一日が終わり、あの子を迎えにいった。
あの子、今日は一日どうしていたかな。
ずっと泣いていたのかな。かわいそうだったな。
ダメな母親だな、わたし。
わたしが保育園に顔を出すと、あの子はすごい笑顔で「ママー!」と叫んで抱きついて、そして「これ、ママにプレゼントだよ!」と言って渡してくれた。
そこには「おかあさん、ありがとう」のプレート。
「いつもおいしいごはんをつくってくれてありがとう」って書いてあった。
それを見たら、もうダメ。涙が流れて止らない。
ごめんなさい、ごめんなさい。
こんなママでごめんなさい。
ダイスキだよ、ダイスキだよ。
ありがとうを言うのはわたし。
いつもママを許してくれて、ありがとう。
ほんとうにありがとう。
この子を抱いて、いっぱい泣いた。
ありがとう、ありがとう。
ママをダイスキでいてくれてありがとう。
わたしはあなたのママでしあわせです。
<文>藤田市男
エッセイスト。新潟市江南区生まれ。
娘5歳・息子1歳のときに青年実業家を目指して独立し、しばらく中年実業家。…気付けばエッセイスト。
著書:【手づくり絵本:ちいさな手】うに企画/【家族っていいなぁ】パート1~3などあたたかなエッセイにファン多数です☆
<絵>藤井正子
トキっ子ラウンジvol.33(2015年3月10日発行)掲載