東日本大震災の際、東京電力福島第一原子力発電所では津波により電源の大部分を失い、燃料を冷やし続けることができなくなり、重大事故に至りました。事前の備えによって防ぐべき事故を防げなかったという反省のもと、柏崎刈羽原子力発電所では二度とこのような事故を起こさないために安全対策を進めています。
原子力発電やエネルギーについて考えていただくきっかけや参考材料として、このページでは、原子力発電の仕組みや防災対策について、そこで働いている人たちがどんなことを考え、仕事をしているのかをご紹介します。
測定器には「低線量測定器」と「高線量測定器」があり、この2種類の測定器を併用することで、低いレベルから高いレベルまで広範囲に測定できます。
柏崎刈羽原子力発電所のまわりには9セットのモニタリングポストが設置されていて、24時間休みなく空気中の放射線を測定しています。
モニタリングポストは、地面から1.5メートルの高さに設置されていて放射線量を継続的に観測するため、その場所での放射線量の変化を常時監視することができ、リアルタイムの測定データはホームページで公開されているので誰でも見ることができます。
放射線の量は、雨や雪によって変わることもあります。空気中には、宇宙からや大地からの自然放射線があります。雨が降ると、空気中に漂っている自然の放射性物質が雨と一緒に地面にたまるので、地上近くの放射線の量が多くなります。
雪の場合、降り始めは雨と同じで多くなりますが、雪が積もってくると大地から出ている放射線は雪に遮られます。このため、地上近くのモニタリングポストで測定される数値は低くなります。ちなみに、トンネルの中は、周囲を大地で囲まれたような状況に似ていて自然放射線が多くなりますが、防波堤の上や海の上では、大地(海底)からの放射線は海の水で遮られるので少なくなります。
福島第一原子力発電所では事故の後、電源がなくなりモニタリングポストによる放射線量の把握が出来なくなりました。このため、柏崎刈羽原子力発電所では、専用の代替交流電源を設置したほか、モニタリングポストが機能を喪失しても、十分に対応できる台数の放射能観測車(モニタリングカー)と放射線サーベイ機器を備えています。
参考:ニュースアトム 2013年8月号「放射線のはなしvo.18」、2016年4月号「放射線のはなし vol.45」
◇ | 阿部 弘幸(あべ ひろゆき) |
◇ | 柏崎市出身 2006年入社 |
◇ | 柏崎刈羽原子力発電所 第二保全部原子炉グループ |
原子炉の冷却装置が使えなくなった場合に備えた代替の冷却設備の設置や、配管の耐震性や耐熱性を強化するためのサポート材の追設や改造をする工事などです。
小さいころからクルマなどの機械に興味があり、将来の夢は、自動車整備士になることでした。工業高校の電子機械科に通っていて進路を考えたとき、自分が生まれ育った柏崎にある世界最大規模の原子力発電所に関わる仕事をしたいと思いました。
印象的だった業務のひとつに、入社4年目に担当した格納容器の「漏えい率検査」があります。これは、格納容器が健全かどうかをチェックする重要な検査です。私はこの検査をするチームの一員として、検査の方法や測定の仕組みや測定で得られた数値をどう判断するかなどを先輩に教えてもらいながら対応していました。当時は、この検査の元となる規格や基準、測定の仕組みや校正記録の読み方、得られた数値をどう判断するかなど、初めてのことばかりで覚えることも多く、最初は途方にくれてしまうこともありました。
私は中途半端が大嫌いな性格なので、わからないことはとことん調べ、図面を片手に現場へ足を運び、周りの先輩にもたくさん質問をして教えてもらいました。そんな私の様子を見て、経験豊富なベテランの協力企業の方たちも、業務が忙しいにも関わらず、私が理解するまで丁寧に教えてくれました。先輩方からたくさんの知識や技術を吸収できたことはとても貴重な経験でしたし、感謝しています。そして無事に検査をやり遂げた時は、大きな達成感がありました。
発電所の安全レベルを向上させていくことにゴールはなく、深化させ追求し続けるものだと思っています。日々、着実に安全対策の工事を進めていくことはもちろんですが、目の前に大きく困難な課題が出てきたとしても、常により良い方法はないか、自分にできることはないかを常に考え、これからも積極的に行動していきます。
目に見えず、においもしない放射線。「今さら聞けないけれど、本当に影響はないの?」と不安を抱いている方も多いのではないでしょうか。ここでは、健康への影響や意外な活用法など、将来ママになる女性が疑問を持つテーマや親子で学べるミニ知識を毎月ご紹介します!
放射線にはいろいろな種類があります。主な放射線にはα(アルファ)線、β(ベータ)線、γ(ガンマ)線、X(エックス)線、中性子線があり、性質はそれぞれ異なります。そのため、放射線をさえぎるためには、それぞれの性質に合ったものを利用する必要があります。
α線とβ線は、上図のように紙や薄い金属で簡単にさえぎることができますが、γ線やX線、中性子線は物質を通り抜ける力が大きいので、鉛や水、厚いコンクリートなどでさえぎります。
α(アルファ)線・・原子核から放出される粒子で、アルファ粒子ともいいます。アルファ線は紙1枚でさえぎることができます。
β(ベータ)線・・原子核から放出される電子で、ベータ粒子ともいいます。ベータ線はアルミニウムなどの金属板でさえぎることができます。
γ(ガンマ)、X(エックス)線・・ガンマ線は不安定な状態にある原子核が、より安定な状態に移る時に発生する電磁波です。エックス線はガンマ線と発生源が異なり、原子から発生する電磁波です。どちらも鉛でさえぎることができます。
中性子線・・中性子は原子核を構成する粒子の一つで、中性子線とは中性子の流れをいいます。中性子線は水・コンクリートのように、水素をたくさん含む物質でさえぎることができます。
放射能を取り扱う作業では、適材適所の工夫がされています。例えば、歯のレントゲンを撮るときに鉛入りのエプロンを着けます。これは、不要なところに放射線(エックス線)が当たらないようにするためです。放射線が出ている場所から離れたり、適切な素材で放射線をさえぎることなどにより、放射線から身を守ることができます。
参考:ニュースアトム2012年12月「放射線のはなし⑪」、2014年4月「放射線のはなし㉖」
もっと詳しく知りたい方はこちら!
»トキママ調査隊『一緒に考えよう 原子力と放射線』(2015年)
»東京電力ホールディングス新潟本社
»柏崎刈羽原子力発電所 広報・ふれあい施設