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東日本大震災の際、東京電力福島第一原子力発電所では津波により電源の大部分を失い、燃料を冷やし続けることができなくなり、重大事故に至りました。事前の備えによって防ぐべき事故を防げなかったという反省のもと、柏崎刈羽原子力発電所では二度とこのような事故を起こさないために安全対策を進めています。

原子力発電やエネルギーについて考えていただくきっかけや参考材料として、このページでは、原子力発電の仕組みや防災対策について、そこで働いている人たちがどんなことを考え、仕事をしているのかをご紹介します。


【今回のテーマ】

1.発電所の安全対策
第5回は、原子炉内の蒸気を使い電源なしで冷却する「高圧代替注水系(HPAC)」について

2.東京電力のおしごと
柏崎刈羽原子力発電所で働く東電社員を紹介。放射線安全部化学管理グループの西田さんからお話を聞きました!

3.教えて!気になる放射線
放射線で時代が分かる?

4.原子力発電所を守る!はたらく車たち
発電所の安全を守る「車たち」を紹介!今回は「熱交換器車」が登場!


📝1.発電所の安全対策⑤

Q.高圧代替注水系(HPAC)って何?

A.緊急時に使用する既存の注水設備が全て使えなくなった場合のバックアップとして、燃料を冷やす水を送り込むために新たに設置した設備です。

原子炉停止直後は燃料からの発熱が大きく、原子炉内が高温高圧になります。燃料を冷やすため、原子炉内に水を送り込むには、高い圧力のポンプが必要です。

HPACは、1時間に約180トンの水を送りこむポンプ容量があり、高温高圧の原子炉圧力容器から発生した蒸気の力を使ってポンプを回すので、全ての電源を失ってしまった時にも、電源なしで原子炉へ注水することができます。このシステムの運転は、弁の開閉操作によって行われ、中央制御室から遠隔で操作することができます。


📝2.東京電力のおしごと ~化学管理グループの西田さん~

✍プロフィール

西田 小海(にしだ こうみ)
柏崎市出身 2009年入社
柏崎刈羽原子力発電所 原子力安全センター 放射線安全部化学管理グループ

■化学管理グループのしごと内容は?

発電所内で発生した液体や気体の成分や組成を調べたり、チェックしたりする仕事です。原子炉建屋などの水や空気を外に出すときに、そこに含まれる放射性物質の量が法令に定められた限度を超えていないかも調査・分析しています。

■東京電力に入社したきっかけ

きっかけの一つは、私が高校2年生の時に発生した中越沖地震です。3日間の停電のあと、送電前の電線の点検を近所の人みんなで見守りました。電気がついた時の感動は今でも忘れられません。

■ある日の 西田さんの一日

8:30 ラジオ体操
8:35 朝のミーティング、メールチェック、1日の業務内容確認など
10:00 現場での測定作業
11:30 液体廃棄物の分析結果を確認
12:00 お昼休み
13:00 昼のミーティング
業務進捗、グループの周知事項の確認など
13:30 翌日の協力企業への指示書を作成、気体廃棄物報告書の作成
15:30 当日の分析結果確認を依頼元へ通知
16:30 夕方のミーティング
翌日の準備が完了しているか確認

■東日本大震災の時は?

当時、私は入社2年目で5~7号機の水質管理の担当でした。柏崎も揺れたので、何か倒れたりしていないか設備に異常がないか、先輩と現場をパトロールし、確認を終えて事務所に戻ると、福島は津波が来て大変なことになっていると知りました。翌日の土曜日、自宅のテレビで福島第一原子力発電所の水素爆発の映像を見たときは、すごくショックでした。発電所の近くにお住いの方々に対してはもちろん、すでに柏崎刈羽からも上司や先輩が福島に応援に行っていたので、みんな無事かとても心配でした。

■先輩を質問攻めに・・

入社してから放射線のことを勉強し始めたので、初めは専門用語や測定機器の取り扱いなど、わからないことが多く苦労しましたが、早く先輩たちのレベルに近づきたくて、上司や協力企業の方を質問攻めにしながら一生懸命勉強して、一つずつ知識を増やしていきました。分析機器の操作ガイドを自分の言葉で、わかりやすく作ったのも、大きな経験と自信になりました。

■家族や友人に対する思い

福島第一の事故後、地元・柏崎の友達から「柏崎刈羽は大丈夫なの?」と聞かれることも多く、きちんと放射線が管理されているのかと、ご不安に思っている方が多くいらっしゃることを肌で感じています。
原子力発電所の話題はニュースで取り上げられることが多いので、「これはどういうこと?」「ニュースで言っていたことがよく分からなかった」と聞かれる機会が増えました。まわりの人たちが、「よく分からないけど、いいや」ではなく、内容を知ろうとしてくれていることがとてもありがたく、自分の言葉で分かりやすく説明できるよう努力しています。私の仕事は「放射性物質を僅かでも発電所の外に出さないこと」です。家族や友人、地域の方から信頼してもらえるよう、勉強と仕事に打ち込んでいきたいです。


📝3.教えて!気になる放射線

目に見えず、においもしない放射線。「今さら聞けないけれど、本当に影響はないの?」と不安を抱いている方も多いのではないでしょうか。ここでは、健康への影響や意外な活用法など、将来ママになる女性が疑問を持つテーマや親子で学べるミニ知識を毎月ご紹介します!

~放射線で時代が分かる?~

tepco_genshijin_fight学校の授業で教わった、ネアンデルタール人やクロマニヨン人。日本でも沖縄県で旧石器時代の人骨が見つかっています。放射線の力で、祖先が生活していた年代を知ることができます。

人骨は土中に埋まると、地下水に含まれたウランを吸着します。「ウラン235」は時間の経過とともに変化して「トリウム231」となり、ついで「プロトアクチニウム231」に変わります。このウラン235とプロトアクチニウム231の割合を特殊な装置で測定することで、その人骨の年代を知ることができます。

近年、脊椎動物で最も長寿であることがわかったのが、北太西洋に生息するニシオンデンザメ。眼の水晶体を使って年代測定したところ、平均寿命は少なくとも272歳、長生きの個体は寿命400歳を超えると推測されました。放射線を利用して明らかになることはまだまだたくさんありそうです。

参考:エッ!こんなところに放射線 下巻
(一財)日本原子力文化財団


🚙4.原子力発電所を守る!はたらく車たち

『代替熱交換器車』ってどんな時に使うの?

原子炉の運転を停止した後も、燃料からは熱が発生し続けます。 このため、熱を外部に逃がす「除熱」により、原子炉を冷やし続ける必要があります。

「除熱」するには、熱エネルギーを水に伝えて外部に逃がす「熱交換」が必要です。福島第一原子力発電所の事故では、海側に設置した熱交換器設備が津波で使えなくなったため、原子炉の「除熱」ができなくなりました。

 

事故の反省から柏崎刈羽原子力発電所では、除熱機能のバックアップとして「代替熱交換器車」を新たに配備しました。

 

多重の津波対策を行っていますが、それでも何らかの原因で既存の熱交換器の機能を失う事態になってしまった場合には、「代替熱交換器車」で原子炉や使用済燃料プールの「除熱」を行います。


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もっと詳しく知りたい方はこちら!
»トキママ調査隊『一緒に考えよう 原子力と放射線』(2015年)
»東京電力ホールディングス新潟本社
»柏崎刈羽原子力発電所 広報・ふれあい施設

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