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東日本大震災の際、東京電力福島第一原子力発電所では津波により電源の大部分を失い、燃料を冷やし続けることができなくなり、重大事故に至りました。事前の備えによって防ぐべき事故を防げなかったという反省のもと、柏崎刈羽原子力発電所では二度とこのような事故を起こさないために安全対策を進めています。

原子力発電やエネルギーについて考えていただくきっかけや参考材料として、このページでは、原子力発電の仕組みや防災対策について、そこで働いている人たちがどんなことを考え、仕事をしているのかをご紹介します。


【今回のテーマ】

1.発電所の安全対策③
第3回は、放射線を遮る鉛の壁?「免震重要棟」とは

2.東京電力のおしごと
柏崎刈羽原子力発電所で働く東電社員を紹介。運転評価グループの堀川さんからお話を聞きました

3.教えて!気になる放射線
夏本番!夏バテの原因は「カリウム」不足?

4.原子力発電所を守る!はたらく車たち
発電所の安全を守る「車たち」を紹介!今回は「がれき撤去車両」が登場!


📝1.発電所の安全対策③

Q.免震重要棟って?

A.災害が起きた時に活動拠点になる頑丈な建物です

(追記:2017年3月)
柏崎刈羽原子力発電所の免震重要棟は、中越沖地震相当の地震の揺れに耐えられるように設計したものです。しかし、福島第一の事故以降に策定された新規制基準に合致する「緊急時対策所」として扱うことはできないと判断しました。免震重要棟は中越沖地震相当の地震には十分耐える設備であるため、有効な活用方法を検討していきます。
【東京電力ホームページ 2017年3月2日プレスリリース】

2007年7月に発生した新潟県中越沖地震では、緊急時対策室として使用された建物の扉が開かなくなり、初動対応に苦労しました。これを教訓にして作られたのが会議室や通信・電源設備を備えた「免震重要棟」で、緊急時に作業を指揮する活動拠点として使用されます。免震重要棟には部長や課長クラスの責任者が交代で泊まっていて、深夜や早朝に災害が起きても、すぐに対応ができるようにしています。

 

免震重要棟には厚さ1cmの鉛のカーテンがあり、野外に設置されているコンクリート製の壁と併せて、建物の外からの放射線を遮る効果があります。これにより、緊急対策室での対応が長期間におよんでも、要員の被ばくを少なく抑えて、継続して対応にあたることができます。建物の地下には、積層ゴムなどの免震装置を備えていて、震度7クラスの揺れを3分の1から4分の1程度に低減します。

 

📝2.東京電力のおしごと ~運転評価グループの堀川さん~

✍プロフィール

堀川 健(ほりかわ たけし)
福島県双葉郡富岡町出身 1989年入社
柏崎刈羽原子力発電所入社後
保修課(計装)、ユニット管理グループ、安全管理グループを担当した後、本社勤務を経て現職
(第二運転管理部 運転評価グループマネージャー)

■運転評価グループのしごと内容は?

発電所が停止している現在の主な仕事は、発電所内で起こった設備故障や火災、怪我などの「トラブル対応」です。迅速で適切な判断や対応が求められるので、運転評価グループは発電設備を運転する部門や修理や点検を行う部門の経験者など、各部門から集まったメンバーで構成されています。
発電所が運転している時は、トラブル対応に加え、設備が安定して運転しているかを評価する仕事を行っています。原子炉の圧力や温度などのデータを定期的に確認して、異常の兆候がないか評価を行います。
事故などが発生した緊急時は、対策本部を支援する「計画班」になります。計画班は、事故時対応の運転操作手順書を確認する「プラント班」や、消防車・電源車などで現場対応する「復旧班」が、その事故に対して適切な戦術で対応しているか、追加する戦術はないかを確認し、総合的に対策本部に報告します。そのうえで、更なる作戦を提案・提言することが任務です。
また、私は「リスクコミュニケ―ター」という立場で、広報部と連携して発電所の取り組みなどを社外の方に分かりやすくお伝えする役割も担っています。

■東京電力に入社したきっかけ

福島県の工業高校に通っていた頃、クラスメイトが東電の入社試験を受けると聞いて、自分も受けてみようと思ったのがきっかけです。入社して実際に発電所で働き始めてからは、日々の業務で、すごく大きな設備を動かしたり点検したりしているのを実感して、「日本のエネルギー、電力を担う原子力発電ってすごいな」とやりがいを感じてきました。

■ある日の 堀川さんの一日

8:30 朝礼~打合せ
部内会議、グループ会議、所内の技術系会議が毎朝おこなわれ、プラント状況やトラブル発生などに関する情報の共有
9:30 mailチェック、きょう1日のスケジュール確認とメンバーへの業務指示
10:00 打合せ
次の訓練に向けた計画班の打合せ、訓練に参加する選抜メンバーの役割確認
12:00 お昼休み
13:00 設備の復旧やトラブル対応の進捗確認、承認書などの書類業務
14:30 トラブル対応
発電所内で作業員が体調不良との情報が入ったことから関係者を即座に招集し、対応を実施

■東日本大震災の時は東京にいました

東京の本社で、中央官庁への窓口である「官庁連絡班」として発電所から受け取った情報を、当時の原子力安全・保安院や内閣府に伝える業務をしていました。事故発生から数日間は、交代なしで昼夜問わず、福島第一原子力発電所とやり取りしていました。

■出身は福島県

私は福島県双葉郡富岡町の出身で、高校卒業までを過ごしました。東日本大震災直後は、富岡町に住んでいた家族兄弟と連絡が取れず、みんながどこに避難したか、無事に避難できたのかも分からず、とても不安でした。

■「必ず」はない

東日本大震災前は、原子力発電所は安全と教えられたし、いろいろな業務を経験して私自身そう思っているところがありました。震災後は、「必ず」はない、どこまでもリスクを考慮した対策をしなくてはならない、と意識が変わりました。事故時の初動対応では、設備が故障した時を想定して、次の手、その次の手を考えるだけでなく、社員自らの手で注水や電源を確保したり、大型車や特殊車両を操作するようになりました。

■目指していること

発電所で働くみんなが何でも言える環境で、発電所で起きている事をなんでも外に伝えられる、明るく元気な職場にしたいです。どんな設備をどんな人が扱っているのか、どんな小さなことや難しい情報でも分かりやすく伝えていきたいです。

■家族との過ごし方

家で家族と過ごすことが多いですね。ときどき一人旅で福島に行ったり、大学生の娘に会いに行ったりするのも楽しみです。
「働いている発電所は大丈夫なの」と娘から聞かれることもあり、その時には「福島第一の反省でこんな設備を付けているんだよ」とやさしい言葉を使って、分かりやすい説明をするよう心掛けています。家族に説明してみて、どのくらい理解してもらえるかが、私の「はかり」になります。皆さんが不安に思う「悪い情報」や「怖い情報」ばかりではなくて、発電所や私たちの取り組みの「良いところ」も知ってもらいたいと思っています。
話を聞いてくれる人の気持ちに寄り添って、その人の疑問や不安を解消することができたら嬉しいです。


📝3.教えて!気になる放射線

目に見えず、においもしない放射線。「今さら聞けないけれど、本当に影響はないの?」と不安を抱いている方も多いのではないでしょうか。ここでは、健康への影響など、将来ママになる女性が疑問を持つテーマを中心に毎月ご紹介します!

~夏バテと「カリウム」~

tepco_natsubate_girl28月に入り夏本番。この時期に心配されるのが夏バテ。食欲がない、体がだるいなどの症状は、大量の汗をかいて体内の「カリウム」が汗と一緒に失われることなどで起こる「低カリウム血症」が原因とも言われています。
「カリウム」は、私たちの体の細胞や神経、筋肉が正常に機能するために不可欠な元素で、食物や飲料から摂取します。体内にあるカリウムのうち、0.012%は放射線を出す天然の放射性物質「カリウム40」です。
『食べ物に含まれるカリウム40の量』/気になる原子力発電vol.2より
私たちは自然界に存在する放射性物質を食物や飲料を通じて日常的に摂取しています。また、体内には常に約4,000ベクレル(体重60キロの日本人の場合)の「カリウム40」があります。

参考:「新版生活環境放射線(国民線量の算定)」


🚙4.原子力発電所を守る!はたらく車たち

『がれき撤去作業』

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福島第一では、津波で運ばれたがれきに道路をふさがれてしまい、緊急車両がすばやく現場に駆けつけることができませんでした。この反省から、がれき撤去のために「ブルドーザー」や「ホイールローダー」を配備しました。そして、社員自ら操作できるように、今までに約100名が大型重機の運転免許を取得し、日ごろから訓練を重ねています。今では、50mのあいだに置かれた10個の巨大ながれきを2分ほどで撤去できるようになりました。

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もっと詳しく知りたい方はこちら!
»トキママ調査隊『一緒に考えよう 原子力と放射線』(2015年)
»東京電力ホールディングス新潟本社
»柏崎刈羽原子力発電所 広報・ふれあい施設

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