好きな季節はいつ? と聞かれれば、ついつい「夏」と答えてしまいそうなわたし。
「イカンイカン。夏なんて暑くて蒸して汗が出て、油断すれば熱中症で倒れてしまうではないか」と思わないでもないのだが、それでも嫌いになれない夏。
たぶんそれは、子ども時代の影響だ。
灼熱の太陽の下、むずかしいことは考えず、真っ黒になって遊んでいた夏。
あのころにとっても夏の暑さは、命の躍動のために必要だったのかもしれない。
わが子たちがちいさなころに、津南の山にキャンプにいった。
雨降りあとの高原にテントを張ったのだが、わたしと妻は「暑い」だの「蒸す」だのとグダグダ言って情けない。
しかし、子どもたちはまるで平気だ。暑さも湿気もすべてエネルギーにするように遊びまわった。
それに引き込まれて、わたしもついつい虫とりなんぞを二十年ぶりにやってしまった。
そのおかげで生きているオニヤンマを生まれてはじめて触ることができたし、虫カゴの中にキリギリスとバッタをいっしょに入れておくと、翌朝にはバッタが消滅してしまうことも学習できた。
やはり夏はおもしろいと思ったものだ。
ちなみに、イラストを描いてくれている須田久子さんは「春先のぬくぬくした布団の中が好き」だそうだ。
ははは、オトナだなあ。
<文>藤田市男
エッセイスト。新潟市江南区生まれ。
娘5歳・息子1歳のときに青年実業家を目指して独立し、しばらく中年実業家。…気付けばエッセイスト。
著書:【手づくり絵本:ちいさな手】うに企画/【家族っていいなぁ】パート1~3などあたたかなエッセイにファン多数です☆
トキっ子ラウンジvol.17(2011年6月25日発行)掲載