子どものころ、わたしはどうしてあんなにバカだったんだろうと思うことがある。
保育園から小学校の低学年くらいまでが人生の中でとくにバカな時代で、
いまなら頼まれてもやらないようなことを夢中でやっていたのだ。
たとえば、雪の日。朝、目が覚めて雪が降っているとすっごくうれしかった。
しかもそれが大雪だったりしたら、「わーい」とパジャマのまま長靴はいて
新雪の上を走りまわり、よせばいいのにわざと前のめりに転んで、
さらに水泳気分でクロールまでしていた。とうぜん服の中に雪が入ってくるのだが、
バカだったから平気だった。「わーい、冷たーい」と喜んでいた。
そのバカが息子にもしっかりと伝わっていた。彼もちいさなころ雪が大好きだった。
大雪の朝には、わたし以上の勢いで「わーい わーい」と雪の中に突っこみ、
そしてクロールのみならず背泳ぎやバタフライまでやってのけた。
その彼が、今はニヒルな大学生をやっている。かなりカッコつけているけれど、
あのころを知るわたしには、いつまでたってもちょっとバカなかわいい子だ。
<文>藤田市男
エッセイスト。新潟市江南区生まれ。
娘5歳・息子1歳のときに青年実業家を目指して独立し、しばらく中年実業家。…気付けばエッセイスト。
著書:【手づくり絵本:ちいさな手】うに企画/【家族っていいなぁ】パート1~3などあたたかなエッセイにファン多数です☆
トキっ子ラウンジvol.19(2011年11月25日発行)掲載