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前回、東京電力の皆さんと開いた座談会で、原子力発電と放射線について話を聞いたトキっ子くらぶの会員モニターの皆さん。東京電力の皆さんから、事故の詳細や安全対策のお話を聞いて知識を深めたことで、漠然とした不安は少し解消されたのではないでしょうか。でも、話を聞いただけでは、まだ分からないことも多いのでは。実際に自分の目で見て知っていただきたい。
今回は、柏崎刈羽原子力発電所見学の様子をお届けします。百聞は一見に如かず?(今回も東京電力の皆さんが施設を案内してくれました)


■広大な敷地を持つ原子力発電所

柏崎刈羽原子力発電所は、柏崎市と刈羽村にまたがって位置しています。敷地の大きさは、海岸線に沿って約3.2km、陸側に約1.4km。敷地面積は約420万㎡(柏崎市:約310万㎡、刈羽村:約110万㎡)で、東京ドームが90個入るほどの広さです。1号機から7号機、合計7つの発電施設があり、総出力は821万2千kWです。現在は全て停止していますが、福島第一原子力発電所の事故以降、新しくできた規制基準に沿って安全対策や点検を進めており、6000人を超える人が働いています。

■柏崎刈羽原子力発電所の歴史
発電所が作られる前、この場所は広大な砂丘地でした。昭和43年に当時の通産省と新潟県による原発立地適地調査が行われ翌昭和44年に柏崎市議会と刈羽村議会で原子力発電所誘致が決議されました。
昭和53年に1号機の建設が始まり昭和60年に営業運転を開始した後も順次建設が進み、最後の7号機が平成9年に営業運転を開始して柏崎刈羽原子力発電所は完成しました。

■原子炉型式による出力の違い
1号機から5号機は「沸騰水型原子炉(BWR)」というもので電気出力は110万キロワット、6号機と7号機は「改良型沸騰水型原子炉(ABWR)」というもので出力は135.6万キロワットです。改良型の6・7号機は1~5号機に比べて建物自体はコンパクトになっていますが、出力は大きくなっています。本日見学するのは改良型の6号機です。


◇5分の1サイズの原子炉模型

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東京電力:発電所構内をご案内する前に、まずはサービスホール(展示館)で、模型を使ってご説明させていただきます。こちらは、5分の1サイズの原子炉模型です。内部を見ていただくと中心に細い棒がたくさんあるのが見えます。これら1本1本がウラン燃料をまとめた「燃料集合体」と呼ぶものです。

 

東京電力:燃料集合体の中には燃料棒があり、ウラン燃料を固めた「ペレット」が縦一列に約350個充てんされています。ペレットは小指の先ほどの大きさですが、1個で1家庭の約8カ月分の電気を作ることができます。模型を手に取ってご覧ください。
モニター:こんなに小さいもの一つでですか(驚き)。

■あの時、福島第一原子力発電所では
東京電力:原子力発電所では、原子炉を「止める」、燃料を「冷やす」、放射性物質を「閉じ込める」ことで安全を確保するように設計されています。また、原子炉を止めた後も原子炉内の燃料から熱が発生し続けるので、注水などで燃料を「冷やす」機能の確保が重要です。地震発生時当時、福島第一原子力発電所の1~3号機は運転中、4~6号機は停止中でした。運転中の原子炉は、地震を検知して全て自動で止まりました。地震により所外からの電源供給が失われましたが、非常用電源が起動して燃料を冷やす機能を確保しました。しかし、その後に襲来した津波により、燃料を冷やすために必要な非常用電源や海水ポンプなどの設備が浸水して使えなくなってしまい、冷やす機能が失われました。その結果、原子炉内の燃料が溶けて事故に至りました。
モニター:炉心部はまだ熱いんですか。
東京電力:現在は50度位です。

■汚染水とは
モニター:テレビでよく聞く「汚染水」はどこにあった水なんですか。
東京電力:汚染水は事故で溶けた燃料を冷やした水に地下水が混ざったものです。福島第一原子力発電所の場合、原子炉建屋が地下10数メートルまでおよんでいて、他の建物とつながっている配管や電線が壁を突き抜けている部分があり、そのすき間から地下水が侵入します。くみ上げた汚染水は敷地内のタンクにためながら、浄化装置で放射性物質の除去を進めています。


■バスに乗り込み発電所構内へ

東京電力:これから構内に入っていきます。入口のゲートでは24時間365日、絶え間なく厳重な警備をしています。

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東京電力:信号などもあり、まるで公道のようですが発電所の敷地内の道路です。

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東京電力:現在走行しているところは刈羽村側のエリアになります。こちら側の地面はもともと海抜が12メートルあり、セメントを混ぜた土でさらに3メートルかさ上げしています。この坂道も防潮堤の一部になっています。柏崎側のエリアは海抜5メートルでしたので10メートルかさあげした防潮壁を築いています。強い地盤に固定するために深いところでは50メートル近く杭(くい)を打ち込んでいます。


東京電力:こちらが事務本館です。技術・事務系部門の社員が約800人勤務しています。


東京電力:次に、高台にある電源車、消防車、冷却設備をご覧になっていただきます。福島第一原子力発電所事故では、すべての電源を失い、原子炉冷却に必要な重要な設備を冷やすための海水ポンプも津波の影響で使えなくなりました。これにより、1~3号機は原子炉を冷やし続けることができず、「炉心溶融」に至りました。また、その過程で大量の水素が発生し、1,3号機の原子炉建屋ならびに3号機と共通配管で繋がっている4号機の原子炉建屋が水素爆発で壊れました。柏崎刈羽原子力発電所では、このような重大な事故に進展するのを防ぐため、バックアップのための電源や原子炉と使用済燃料プールを冷やし続けるための様々な注水設備や手段を備えています。

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東京電力:まず、電源車です。「空冷式ガスタービン発電機車」は軽油の燃焼ガスでタービン(羽根車)を回して電気を作ります。制御車と発電機車の2台で1セットで、3セット配備しています。駐車場地下には燃料の軽油を15万リットル貯蔵しています。また、ガスタービン発電機車が使えなくなった場合のバックアップとして、23台の「電源車」も配備しています。あらゆるリスクに対応できるよう、施設内に分散して配備しています。次に、消防車です。移動可能な注水設備として、42台を配備しています。電源がない場合でも原子炉等へ注水することができます。

tepco 東京電力 見学 editIMG_9740東京電力:こちらはおよそ2万トンの淡水をためることができる貯水池です。海抜45メートルの位置にあり、緊急時に原子炉を冷やすための水源のバックアップとして使用します。福島での事故以降に新たに設置しました。高台にあることで電源がなくても高低差を利用し重力で水が送り込めるようになっています。
モニター:何重にもバックアップの体制ができているのですね。地震や津波への備えの他に、例えばテロ対策として強化している点等はありますか。
東京電力:万が一事故に至った際に放射性物質を除去する装置を地下に設置する計画を進めています。その他にも、施設内に常在する警察や、自衛隊との合同訓練なども実施しています。


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東京電力:これから6号機の建屋に入ります。運転を停止している現在は、施設で使用する電気は関東で作られた電気を受電して使っています。さらに、東北電力からも電気を引き込むことが可能なバックアップの体制を取っています。

■原子炉建屋内を見渡す

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東京電力:ガラス越しに見える丸いプールが原子炉の上部です。普段は分厚い床でふたをしていますが(※1枚目の写真左すみに床板2枚重ねで置かれている)、現在は点検中のため開けています。水で満たされているのが見えるでしょうか。水は燃料を冷やす目的と放射線を遮蔽(しゃへい)する役割があります。中に格納されている燃料は、運転中の場合1年に5分の1程度を入れ替えます。入れ替えの際は、UFOキャッチャーのように掴み、水中で吊り上げて移動します。

東京電力:福島第一原子力発電所の事故で建屋が爆発した映像をテレビでご覧になったかと思います。あの爆発は原子炉そのものが爆発したのではなく、この部屋に充満した水素が爆発し建屋の天井や壁が吹き飛んだものです。あの事故を受けて、柏崎刈羽原子力発電所では、「水素除去装置」(水素と酸素を結合させて水蒸気に変える、電源のいらない装置)の設置をし、更に壁のパネルを外せるようにしました。

■原子炉建屋を後にしてタービン建屋へ

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東京電力:一番手前の金属光沢の部分が「高圧タービン」、その奥の水色のかまぼこ型の部分が「低圧タービン」、一番奧が発電機です。原子炉で作られた260~270度の高温の蒸気でタービン(羽根車)を回転させ電気を作ります。

モニター:今は動いてないんですね。
東京電力:はい。現在は定期点検を行っています。福島第一原子力発電所の事故以降、安全対策をさらに強化するために改良を進めています。


■見学を振り返って

eeditIMG_9963モニター:注水用の消防車の数や防潮堤の高さ、厳重なセキュリティ対策はすごいと思いました。これは人から聞いたり、自分で調べたりするだけでは分からなかった部分でした。今日は自分の目で確かめる事ができたので良かったと思います。
モニター:出身が茨城で、地震の時も茨城にいました。当時は何が起きているかわからず、知らないことが恐怖でした。少しでも理解を深めた方が恐怖を減らすことができると思います。今回の見学で、安全対策に関しては、様々な取り組みを実施されていることが理解できました。これからも続けてほしいです。最後に質問ですが、東日本大震災と福島第一原子力発電所の事故前後では、東京電力の皆さんの意識は変わったと思いますか。
tepco_eeditIMG_9971東京電力:大きく変わったと思います。福島第一原子力発電所の事故では、がれきの撤去も消防車を動かすこともできませんでした。この経験から、社員自らが率先して初期対応ができるよう、管理体制を再構築し、災害時の訓練も継続的に行っています。今回は皆さんに直接お話ができる貴重な時間になりました。今後もできるだけ多くの皆さまとコミュニケーションをとり、透明性の高い情報発信に努めていきたいと思います。


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