【トキっ子エッセイ】
秋・哀愁

 

わたしの娘はキンモクセイの咲く秋に生まれました。
病気だった妻が、命がけで生んだ娘です。
そして娘もそれに応えて、命がけで生まれてくれました。
ベッドに並ぶ妻と娘の顔を見ながら、こんどはわたしが命がけで二人を守っていくぞと誓いました。

あの日から、娘の誕生日には親子でお祝いをし、ケーキを食べてきました。
わたしたちの贈るプレゼントに目を輝かせ、「オトーさん大好き」と抱きついてきた娘です。

しかし、こんな幸せな日々は永遠には続きません。
あんなにお父さんにベッタリだった娘が「えっとね、こんどの誕生日はアタシ帰りが遅いからさ、べつの日にお祝いしてくれるかなー?」なーんてことを言い出すのです。
オトシゴロになって彼ができると、わたしたち親をほっぽって、大好きな人と二人でお祝いする約束なんてしちゃうんですぅ。

だから、ちいさな子をお持ちのお父様がた、いまだけなんですよ。
ほんと、いまだけ。いまのうちにいっぱい抱っこしておきましょ。
いずれ、抱っこどころか、そばにいくだけで「こっち、こーなーいーでー」とか言われちゃう日がくるのですってば、とほほ

 

<文>藤田市男
エッセイスト。新潟市江南区生まれ。
娘5歳・息子1歳のときに青年実業家を目指して独立し、しばらく中年実業家。…気付けばエッセイスト。
著書:【手づくり絵本:ちいさな手】うに企画/【家族っていいなぁ】パート1~3などあたたかなエッセイにファン多数です☆

 

トキっ子ラウンジvol.18(2011年9月25日発行)掲載

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